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    焼却ごみを削減する施策は、私の前の鶴岡前市長時代に始まりました。
    千葉市は焼却ごみを3つの清掃工場(古い順に北谷津、北、新港)で処理しています。このうち、一番古い北谷津清掃工場の老朽化が著しい状況で、メンテナンス費用もかかっている上、今後いつ故障等で止まるか分からない状況にありました(平成26年度、実際に故障で一時停止しました)。

    単純に考えると北谷津清掃工場を建て替える必要がありますが、その場合、新たな清掃工場用地を確保し、莫大な建設費(規模にもよりますが100億円以上)を投入しなければなりません。清掃工場を建設しようとすると、地元の方々が反対することも多く、新たな用地確保はそう簡単ではありません。長い年月を要してようやく地元と合意できたとしても、地元対策として道路や様々なインフラを充実させる等の約束をせざるを得ないことも十分考えられます。

    そこで、千葉市は新たな清掃工場用地を確保することをせず、焼却ごみ量を減らすことで対応することを考えました。具体的には焼却ごみ量を3分の1近く大幅に減らし、3つの清掃工場ではなく2つの清掃工場で処理可能とすることで、北谷津清掃工場を停止させるという考えです。
    また、焼却ごみを削減することは最終処分場で埋め立てる焼却灰の削減にもつながり、処分場の延命化にもつながります。最終処分場は清掃工場以上に用地確保に住民の理解が得られにくく、現在使用している新内陸処分場が一杯になると次の処分場確保はかなり困難ですから、少しでも延命化する必要があります。

    ここから市の最重要施策の一つである「焼却ごみ3分の1削減」施策がスタートしました(平成19年度)。目標は年間254,000トンです(ちなみに平成18年は330,692トン)。

    市の積極的な広報啓発活動と自治会を始めとする地域住民の理解もあり、年々順調に焼却ごみは削減されてきました。
    私が市長に就任した平成21年10月には、焼却ごみから資源ごみへのシフトを進めるため、資源ごみの日を月2回から週1回に増やし、一方で焼却ごみの日を週3日から週2日に減らしました。

    収集日数の変更は前市政時代に決定され、私が実行に移したのですが、これが当時はかなりの不評でした。
    1週は7日しかありませんから資源ごみの日を増やすためには焼却ごみの日を減らすしかありません。多くの自治体では焼却ごみは週2日回収ですが、千葉市に住んで以来、週3日が当たり前の市民にとってみれば「家にごみが溜まる」と不満に思うのは自然なことです。
    10月導入のため、導入に伴う周知が夏(生ごみが腐りやすい)に差し掛かる時期にぶつかったことも大きかったと思います。

    財政再建を訴えて6月に当選したこともあり、市民からは「お金が無いからって、市民生活に直結するごみ処理予算を削減するなんて」と大いに批判されました(資源ごみの収集日が増えていること等もあり、ごみ処理費用削減にはそれほどつながっていません)。
    また当時私は独身でしたから市民からも議会からも「熊谷市長は独身だから、普通の家庭では生ごみがたくさん出ることを知らないらしい」などとも言われました(週2日に賛成していた会派の議員からも言われたことは納得できませんでしたが、議会ではよくあることです)。

    と不評の施策ではありましたが、この施策によって平成21年度で約15,000トンほど焼却ごみが削減されました。変更は10月スタートですから、半年間でこれだけの効果が出たことになります。平成22年度も9月までその効果は続き、合計約10,000トンの削減となりました。

    ここまでは順調だったのですが、施策効果が一巡した平成22年10月以降は削減ペースが一気に鈍化します。雑巾を絞ると最初はたくさん水が出ますが、段々絞っても水が出なくなるのと同じで、予想はある程度されていました。
    その後も細かな施策を打ち続けましたが、平成23年度は2,038トン、平成24年度は551トンと削減は殆ど進みませんでした。

    目標達成まで残りあと1万トン余り、というところで足踏みを続けている状況の中、前市政の時代から検討されてきた家庭ごみ手数料徴収制度の再検討が始まりました。
    前市政時代に導入に向けて検討が進められたものの、自治会等からの反発が強く、見送られた施策です。

    家庭ごみ手数料徴収制度は、ごみを捨てる際に手数料を徴収する制度で、ごみを多く出すとその分手数料を多く払う仕組みです。ごみ排出に一部従量制を導入することで、多く排出する人に応分の負担を求め、それによって排出抑制のインセンティブを作るものです。

    水道・電気・ガスなど、ライフライン関係は基本的には一部従量制度となっています。使った分だけ費用が発生することで、人々は節電や節水のインセンティブが発生し、社会全体として節電や節水が進みます。ネットや携帯に関しては長らく定額制だったものの、昨今では容量によってプランと料金が変わる形で、受益者負担の原則が浸透しつつあります。
    ごみは他のライフラインと違い、いくらごみを出してもお金は取られません。ごみ処理費用は市民が納める税金で賄われており、住民は自分がごみを捨てることでいくら費用がかかっているのか知る機会はありませんし、節約のために減らすという気持ちにはなかなかなりません。
    ちなみに45リットルの焼却ごみを1袋捨てると、収集・処理・埋め立て等のトータルでは200円以上がかかっています。仮に毎回200円取られれば、多くの人はごみを積極的に減らそうと思います。とはいえ、実際にかかっている費用全てを市民に負担頂くのはさすがに公的サービスとしていかがなものかと思いますので、実際には一部を負担頂くことになります。

    ちなみに制度に反対した共産党は「ごみ処理は基礎自治体の基本サービスだから、そのサービスに手数料を取るのはおかしい」と主張していましたが、それを言えば水道や下水道も同様です。自治体が住民に提供するもので、税金から多くの費用が賄われていますが、利用者も従量制で一部負担をしています。
    この手数料徴収制度は全国的には6割以上の自治体で既に導入されており、制度検討時は千葉市と同じ政令市では20市中7市、県内市町村では34市町村が導入済みでした。

    千葉市では有識者を交えた専門の審議会で「早急に検討を」との答申を受け、具体的検討に着手し、議会でもかなりの議論をして頂いた上で平成25年3月の議会で条例を可決、十分な周知期間を経て、平成26年2月からスタートすることとしました。

    手数料の金額も大いに交わされました。導入している自治体の多くは1リットルあたり0.8~2円で、当然ですが高ければ高いほど削減インセンティブは高くなります。導入当初安く設定し、効果が出ないので値上げした自治体もあります。
    市としては、焼却ごみ3分の1達成のため、残り1万トン余りが確実に削減できる金額設定で無ければ意味がありません。とはいえ、こればかりはやってみなければどの程度減るか分かりません。審議会や議会でも「本当に減るのか」「市民負担となるので極力安い金額設定を」「むしろ高い方が良いのでは」等々、多くの議論がありました。

    当初、私たちは最も一般的な1リットルあたり1円を想定していましたが、議会の意見もあり、政令市で最も安い熊本市と同様の0.8円とすることになりました。市民負担に配慮した一方で、削減量が少なくなるリスクも抱えてのスタートとなったわけです。

    ちなみに「なぜ有料化の前にプラスチック分別などをやらないのか」というご意見があります。
    私たちも手数料徴収制度ありきではなく、ごみ削減が進まない中で、さらなるごみ削減を図るために4つの施策について市内部はもちろん、削減に意識の高い市民の方にも入って頂き、研究を重ねました。

    具体的には
    1.生ごみの再資源化
    2.剪定枝の再資源化
    3.プラスチックの再資源化
    4.ごみ有料化
    の4つです。

    まず、生ごみの再資源化ですが、既にモデル地域において再資源化を実施しており、ごみ削減にも削減意識向上にもつながるという結果が出ています。しかし、生ごみの再資源化は非常に費用が高いことから、今後もモデル地域の拡大は進めるものの、全市に広げての実施は難しいと判断しました。
    次に剪定枝の再資源化ですが、こちらも費用が非常に高いということと、原発事故後、放射能の懸念から剪定枝の再利用について制約があり、検討時点では施策として導入できない状況でした。
    次にプラスチックの再資源化ですが、こちらも費用が莫大(約8億円/年)であることと、国において容器包装リサイクル法の見直しが予定されており、地方自治体にとっても影響が大きいことも予想されることから実施は困難と判断しました。
    そこで、最終的に手数料徴収制度に至った次第です。

    他にも「不法投棄が増えるのではないか」という意見もあります。
    これは制度検討時から先行市を調査した結果、顕著に増加した事例はありませんでした。実際に制度導入後も増えていません。制度導入前から対策を強化したこともあり、環境事業所に通報があったものを回収した件数は、3月は前年度の同時期と比較して増加したものの、合計件数は平成25年度の1,400件から26年度の1,342件と若干減少しています(参考:http://www.city.chiba.jp/kankyo/junkan/haikibutsu/gomi-7month.html#huhoutouki)。

    正直に申し上げると、市民負担となる手数料徴収制度は反発も大きく、政治的にはかなりのマイナスです。市の将来のことを考えなければ、手数料徴収制度を導入せず、年間8億円の税金を投入してプラスチック分別回収をした方がよほど人気が出ます。
    私にとっては政治生命を賭けた施策であり、これで3分の1達成ができなければ責任を取らなければいけないという思いを持っての決断でした。条例を可決してくれた議会、周知に努めて頂いた自治会等の方々、何より削減に取り組んで頂いた市民の方々に深く感謝しています。

    導入後、千葉市の焼却ごみ量は1年間(平成26年2月~平成27年1月)で15,817トン、率にして5.96%と大幅削減を達成しました。この数値は事業系ごみ量も含まれていますので、家庭系ごみだけで計算すると8%以上の削減となっています。
    市民お一人おひとりの取り組みによって、当初計画より2年前倒しで焼却ごみ3分の1削減が達成され、平成29年3月をもって北谷津清掃工場は閉所となりました。これにより、ごみ処理に要する費用は大幅に削減され、財政再建と市民福祉の向上につなげることができます。

    (大都市リサイクル率の表を挿入)

    さらに、人口50万人以上の大都市におけるリサイクル率で千葉市は平成22年度より全国1位となり、データが出ている平成27年度まで6年連続1位となっています。市民の皆さんとともに達成してきた成果を私自身も大変誇らしく、ありがたく感じています。

    残る2つの清掃工場も徐々に老朽化が進みますので、3用地2清掃工場体制の下で、北谷津清掃工場の跡地に将来的な新清掃工場を整備するための検討に着手したところです。地元の理解を得ながら中長期的に最適なごみ処理体制を構築していきたいと考えています。

    また、手数料徴収制度による手数料収入はリサイクル基金に全額積み立て、新たに剪定枝の再資源化に取り組むこととしました。既に平成28年度より中央区にてモデル事業を実施し、削減効果が見込めると判断し、平成29年度より全市展開します。これにより、さらに焼却ごみ量を削減し、ごみ処理費用の低減や最終処分場の延命化、大都市リサイクル率1位のさらなる継続を図っていきます。