[2020年4月2日] 千葉市における学校の再開・休校の考え方、市内感染状況について

千葉市において学校を4月6日に再開するにあたり、その考え方についてご紹介します。
もちろん、学校再開については千葉市教育委員会が主体的に判断するものであり、その教育委員会の判断を受けて、公衆衛生部門を所管する市長部局としてその判断が妥当か、多角的に検証し、尊重すべきものと判断しています。

千葉市のこれまでの感染状況

まず、現下の感染状況についての評価です。

千葉市においては現在、感染者数は4人。ここ1週間で3人の感染が確認されており、全て都内に通勤する方です。濃厚接触者の健康観察や検査等の状況から、この方々から家族も含めた他への感染は現時点で確認されていません。
4/1に県が発表した20代女性は住民票が千葉市にあるものの、千葉市に居住実態が無いとのことです。

また、千葉市在住ではないものの、民間保育園で勤務する保育士1名の感染が判明し、当該保育園および系列保育園の職員や児童について緊急でPCR検査を実施しましたが、全職員34名、児童59名(本日10名追加で陰性が判明)、全て陰性となっています。あと少し児童の検査が残っていますが、濃厚接触者とされる児童は全て検査が終わりました。4月10日まで慎重に健康観察を行っていきます。
2月に市川市在住で市内中学校に勤務する教員の感染がありましたが、この方は陰性が安定し、既に退院済です。濃厚接触者に対してPCR検査を実施して全て陰性だったほか、教職員・生徒の健康観察の結果も問題ありませんでした。
感染された方を始め、関係者が感染予防行動に留意頂いていることの表れかと思います。

一方で4月2日、東京都内の保健所において都内在住で幕張テクノガーデンで勤務する会社員の方の感染が確認されました。都内保健所から市保健所への引継ぎ、現地調査等があったため少し時間を要しましたが、濃厚接触者26人を特定し、健康観察を行っています。既に最終出勤日から1週間が過ぎていますが、濃厚接触者の中で発熱や咳など具合の悪い方は出ていない状況です。今後も慎重な健康観察を行い、速やかな対処と市民への適切な情報発信に努めていきます。
東京都より都民に対して在宅勤務等の要請が出されていることから、改めて市内企業には在宅勤務も含めて適切な対応をするよう要請していきます。

東京ほか首都圏の感染状況データ

首都圏における感染状況を添付の通りデータ・グラフでまとめました。
千葉市は東京都はもとより神奈川県、埼玉県、千葉市を除く千葉県よりも人口あたり感染者数が少なく、現時点において感染拡大に至っていない状況です。また、人口あたりのPCR検査数においても東京都や千葉市を除く千葉県よりも多く、陽性率も低いことが見て取れると思います。私たちが見ているのは単純な数だけではなく、クラスターの有無、感染者が主に市内で行動しているか等を見極めて、市内感染状況を判断しています。

東京都の感染がなぜここまで拡大しているか

見て頂ければお分かり頂けるように東京都の感染状況が突出していることが分かります。以前より私たちは東京都の感染リスクを早くから警鐘を鳴らしてきましたが、通勤だけでなく、それ以上に都内で活動することによる接触・飛沫感染リスクが高いと思われます。
先日、東京都が注意喚起したように、夜の飲食、特にバーやナイトクラブ等の接伴飲食業が感染拡大につながっているものと見られ、接伴飲食業での感染が疑われる事例は東京都の最近の感染者数の約3割を占めています。感染者の中には接伴飲食業に立ち入ったことを秘匿する方もいることから実態としてはさらに多いことも予測されます。
東京都に通勤せざるを得ない方はもちろん、市内・県内においてもこのような3つの密につながるような環境での会食は絶対に避けて頂くようお願いします。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/…/03/documents/20200330_02.pdf

4月1日の専門家会議では地域の感染状況を3つに分類し、それぞれで実施すべき対策の一例について紹介されました。東京都は「感染拡大警戒地域」として位置付けてられており、一方で、千葉市のような地域はその次の「感染確認地域」に区分されると考えられます。(4月1日の専門家会議の資料はこちら。https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617992.pdf
なお、文部科学省では国の専門家会議の提言を受け、「感染拡大警戒地域」でも一律の休校だけでなく、時差通学や分散登校も選択肢として示しています。

子ども、学校に対する正しい感染リスク認識を

また、4月1日の専門家会議では学校について「現在の知見では、子どもは地域において、感染を拡大する役割をほとんど担っていないというエビデンス、情報を得ている。従って、学校については地域や生活圏ごとの、県という大きなくくりではなくて、地域や生活圏ごとの蔓延の状況を踏まえて、判断していくことが重要だと思います。」と発言がありました。
さらには、新型インフルエンザの際は子どもたちも感染を拡大する役割を果たしたことから学校休校は感染拡大抑止に効果があったものの、新型コロナウイルスについては、これまでの知見から子どもはドライビングフォースではない、学校休校に感染拡大抑止の効果があるかは専門家会議としては示せない、インフルとは違う対応を求められているとの発言でした。

実際に、千葉市を始め全国で新型コロナウイルスに感染した方の濃厚接触者として同居する子どもを健康観察・検査する事例が多いのですが、子どもの陽性率が他の世代と比べ低く、その子どもから他へ感染した事例が確認されていません。質疑応答では「感染者数が増えた中で、こどもたちの間で伝播がおこって増えたというエビデンスはない」との回答もありました。これは膨大に積み上がった海外の事例においても同様の傾向ですが、私たちは硬直的に考えず、仮に新たな知見が出た際には柔軟に対応していきます。

2月27日時点では新型コロナウイルスを感染させる可能性のある成人の行動自粛を殆ど行っていない状況下で総理が一斉休校をしてしまったがために、学校や子どもの感染拡大リスクが国民に誤って受け止められ、成人世代の行動自粛以上に休校が必要との印象を強く持ってしまっています。専門家会議では「国民にリスクを呼びかけるという意味でインパクトはあったと思う」との評価でした。
行動制約には社会経済や人々の生活に大きなダメージを与える以上、地域の感染状況に応じて疫学的に最も有効と思われる層・行為から順次制約をかけていくことが感染症対策では重要です。

これまでの新型コロナウイルスの知見を考慮すると、現在の千葉市の感染状況において、強い行動制約を強いられる層として子ども達を優先的に選出し、疫学的根拠なく休校を選択することで学びの機会を奪うことは適当ではないと、私たちは考えています。

今後の休校方針について

もちろん、何があろうと学校を開け続けるわけではありません。感染拡大のおそれがあれば、他の世代への強い行動制約と相まって学校においても休校とします。

休校については新型コロナウイルスへの対応が評価されている台湾における休校基準をご紹介します。
「高校以下では、教員か生徒1人の感染が確認されたら学級閉鎖とし、2人以上が感染したら休校とする。また、校内で感染者が出た場合、運動会などの大型イベントを中止する。地域で休校となった学校が3分の1に達した場合、その地域内全ての学校を休校とする」

千葉市は総理の一斉休校前に定めた休校方針で再開後、臨みます。台湾の基準よりも厳しい方針となっています。休校期間は2週間です。

・児童生徒・教職員の感染が判明した場合、その学校を休校とします
・学校関係の感染が無くとも地域で複数感染がある等、その地域で感染拡大のおそれがあると判断した場合はその地域全体の小中学校について休校に踏み切ります
・市内全域に拡大のおそれがあると判断した場合は市内一斉休校とします

専門家会議においても「小中学校はかなり狭い生活圏。地域と生活圏について、自治体においてリスク検討して欲しい」とのことでした。

学校再開にあたっての徹底的な予防対策

とはいえ、「だから再開して大丈夫なんですよ」と気軽に再開をするわけではありません。この間、公衆衛生部門の助言も得ながら、市教育委員会が学校再開にあたって留意すべきことを徹底的に確認し、対策を準備してきました。
まず、第一に、子どもだけでなく、教職員の健康管理を徹底し毎日、体温測定などを行い、症状が現れた際には登校・出勤しないようにします。

〇児童生徒同士の座席をできる限り離す
〇児童生徒同士が接触したり、間近で会話や発声したりするような学習は避ける
〇学校の状況に応じて、普通教室より広い特別教室を活用する
〇音楽の学習は、体育館や校庭を利用して授業を実施する
〇体育の学習は、校庭で実施する学習を優先する。 なお、当面の間、個別でできる内容を中心に実施する

さらに、授業時間をスライドさせることで校庭利用を時間差で分散させるほか、休み時間も分散させることで密集度を低減させます。手洗い時間を設定し、徹底した予防を行います。
給食は既に一斉休校前から対面式ではなくなっていますが、給食室への食缶返却時に児童生徒の滞留が見られることから返却時間にも時間差を設けます。
体育館での授業の際には、体育館の窓等を開放することはもとより、猛暑対策として各学校に整備した大型扇風機を活用して換気を徹底します。

これに加えてさらに当面は小中学校における授業時数を短縮し、子どもルームと接続する14時半までとします。また、部活動は当面休止とします。
これら学校での感染予防対策を、再開までに各学校から保護者に伝えるよう、市教育委員会には要請しています。

休校中に子どもたちの様子を確認しましたが、保護者がいない状況下で行動する子どもがどうしても増える傾向にあり、教員の下で管理される学校生活と比較して、必ずしも休校によって感染リスクが低減されるとは言いにくい側面もあります。
学校施設はこれまでも児童生徒が多数集まることから感染症へのハード・ソフト両面にわたる対策が施されており、換気も十分に行える設備となっています。
4月1日から教育委員として新しく就任頂いた竹田医師は、新型インフルエンザ発生時に千葉市医師会の理事として対策を担当された方でもあります。今後も疫学的知見を十分に取り入れ、学校における感染リスクを低減するよう、教育委員会には要請していきます。

なお、私たちは子どもたちがカラオケ等の多くの人が集まる場所や密閉した空間に行かないよう、放課後・週末においてこうした3つの密を守ることが難しい場所に行くことに自粛を求めるほか、厳しくパトロールをしていくこととしています。

以上、私たちの考え方を示させて頂きました。この説明にご納得されず、お子さんをどうしても休ませたいという方はインフルエンザと同様に欠席扱いにならない出席停止となります。また、そのお子さんがいじめ等、不当な扱いを受けないよう、十分に配慮していきます。
学校現場や教職員の皆さんはプレッシャーの中で子どもたちの感染予防、何より大事な学びのために全力で準備してくれています。学校現場に休校について問い合わせ、学校現場を疲弊させないことを強くお願いいたします。

——————————————–
【参考:東京以外で休校を実施した都市の状況】
熊本市:GW明けまで休校(ここ1週間で温浴施設でクラスター発生、陽性患者が飲食店で勤務しており、感染拡大のおそれあり)
福岡市:GW明けまで休校(ここ1週間で約20件、感染者が急増。市内で活動する人が多く、福岡市にて感染拡大のおそれあり)